VC、CVCについて、その種類、特徴、メリット・デメリットを紹介(前編)
目次
- はじめに
- VC(ベンチャーキャピタル)とは
- VC(ベンチャーキャピタル)の種類と特徴
- 金融機関系VC
- 事業会社系VC(CVC)
- 独立系VC
- 政府系VC
- 大学系VC
- 地域系VC
- 海外系VC
- 日本のVC(ベンチャーキャピタル)市場動向
- スタートアップにおける資金調達状況
- VCによるスタートアップへの投資額推移
- VCによる投資分野と投資ステージ
- IPO市場におけるVCの出資割合
- おわりに
1.はじめに
一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)が、2023年に本組織に加盟するVC(ベンチャーキャピタル)ならびにCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)に対して、投資方針に関するアンケートを実施しました。
その結果、投資金額を「増やす」と回答した企業は全体の31.5%、「今まで通り」と回答した企業は58.4%と、昨年に続き、約9割の会員が今後の投資方針について「現状維持または増加」という回答結果になっています。
このようにスタートアップやベンチャー企業へのVC及びCVCからの投資は、今後も継続して行われていく様子がアンケートからもしっかり読み取れます。
参照先:一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会/プレリリース
ではそもそもVC及びCVCとは一体どのような組織なのでしょうか?
またその投資の目的は何でしょう?
本記事では、VC及びCVCについて、その種類や特徴、両者の違い、各々の利用上のメリット・デメリットなどを前編・中編・後編の3回に分けて詳しく紹介します。
まずは前編では、VCの仕組みとその種類、各々の特徴、さらにVCの市場動向など詳しく解説します。
2.VC(ベンチャーキャピタル)とは
VC(ベンチャーキャピタル)とは、将来的に高い成長が見込まれる未上場の新興企業(ベンチャー企業やスタートアップ)に対して投資を行う専門の会社やファンドのことをいいます。
またVC(ファンド)に資金を供出する投資家は多種多彩で、一般の事業会社に加え、銀行等の金融機関、投資信託会社や年金基金等の機関投資家、保有資金に余裕のある個人まで色々です。
多くの新興企業は事業立ち上げの初期段階では事業資金が十分でないケースが多いです。
そのためVCは、これらの新興企業に資金を出資して、企業が成長して新しい製品や技術、サービス、アイデア等を市場に提供できるよう支援しています。
また出資の代わりにVCは、出資を受けた企業から株式の一部を取得して、投資した企業が成長して上場する際、あるいは他の企業にM&A等で買収された際に保有していた株式を売却して売却益を得ようとします。
そのためVCは投資した企業に対して、より企業価値を高めるため、資金提供だけでなく、経営の助言や役員派遣なども同時に行っています。
以下の図が上記で解説したVCの全体的なイメージです。
フリー素材提供元:いらすとや (VCの仕組みは当社作成)
3.VC(ベンチャーキャピタル)の種類と特徴
VCはその成り立ちや特徴によって様々な種類があります。
本章では代表的なVCの種類とその特徴を解説します。
3-1.金融機関系VC
金融機関系VCは、銀行、証券会社、保険会社、ノンバンク等の金融機関が出資母体となって設立されたVCです。
豊富な資金力を有する金融機関が資金の拠出母体となっているため、VCも大規模投資が可能で、業界や業種を越えて幅広く多くの投資実績があります。
また投資フェーズ問わず、ベンチャーやスタートアップに投資しており、特にIT、バイオなど成長性の高い企業にも投資しています。
3-2.事業会社系VC(CVC)
事業会社系VCは、主として資本力に富む大手企業が運営主体となっているVCです。
Corporate Venture Capitalとも呼ばれており、略してCVCといいます。
事業会社がVCを運営する背景には、自社ビジネスと投資したベンチャー企業・スタートアップとのシナジーや、自社にはない技術、視点、知見等を取り込んで自社の成長につなげたいとの意図があります。
3-3.独立系VC
独立系VCとは、特定の親会社を持たずに資本的に独立して投資活動を行うVCのことです。
独立系VCの例としてはジャフコや日本アジア投資などがあります。
独立系VCの特徴として、特定の企業に依存していないので、特定の企業や業界に縛られることなく様々なジャンルに投資活動が行えるのが強みです。
3-4.政府系VC
政府系VCとは、国や地方自治体が公的資金を活用して出資母体となって投資活動を行っているVCです。
そのため投資目的として、短期的な財務リターンより国内の技術革新や産業育成等の支援活動を重視しており、長期にわたる産業政策と連動した投資が多いです。
政府系VCの例としては、日本政策投資銀行系のDJBキャピタルがあり、IT系ベンチャーやスタートアップ等に投資する民間VCとは投資先も異なることもあります。
3-5.大学系VC
大学系VCは大学が直接出資して投資活動を行うVCです。
大学や関係する研究機関から生まれる技術・イノベーションやビジネスに対して支援を行います。
とりわけ大学の研究成果をビジネスにつなげるベンチャーやスタートアップに対して投資や支援を積極的に実施します。
大学系VCとして有名な先としては、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)があります。
3-6.地域系VC
地域系VCあるいは地域特化型VCとは、特定の都道府県や市町村に所在している企業に対して出資を行うVCです。
政府系VC同様、地域の産業政策や技術革新の支援を主な目的として、地方で高い技術力を有する企業を見いだして出資します。
地域系VCの代表的な先としては、新潟県で「日本のシリコンバレー新潟の創出」を掲げて企業支援を行っている新潟ベンチャーキャピタル株式会社が有名です。
3-7.海外系VC
海外系VCとは、外資系企業が親会社として運営しているVCです。
国内VCに比べて投資金額が非常に大きいという特徴があり、客観的な経済合理性を優先し、国際的なネットワークを活用して積極的に投資活動を行っています。
4.日本のVC(ベンチャーキャピタル)市場動向
日本のVC市場動向を、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会が毎年発行している「ベンチャーキャピタル最新動向」2022年分からその内容を抜粋して紹介します。
日本ベンチャーキャピタル協会は、将来性のある未公開企業の起業・成長・発展を支援するために投資等の形で資金提供し、経営支援も行うVC会員やCVC会員を中心とした組織です。
本協会の会員はVC会員、CVC会員、賛助会員から構成され、毎年多くの会員が新規に登録されています。
参照先:一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会
4-1.スタートアップにおける資金調達状況
日本におけるスタートアップの資金調達額の総額は、2019年度で6,000億円と毎年増加の一途を辿ってきました。
しかしコロナ禍の2020年には5,554億円と若干調達額が低下したものの、2021年には8,508億円と再び増加基調になり、2022年には8,774億円と過去最高を記録しています。
またスタートアップの1社当たりの調達額も、1回の調達で平均3.5億円、中央値が1.2億円と大型化が進んでいます。
情報元: 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会/2022年VC市場動向
4-2.VCによるスタートアップへの投資額推移
スタートアップの資金調達状況を資金の出し手側から見ると、投資家タイプ別投資額のうち、VCからの資金が総額全体の3~4割を占めています。
たとえば2022年では、VC、事業法人、金融機関、個人等の投資家のうち、VCがスタートアップに投資した割合は全体投資額の40.9%を占めました。
情報元: 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会/2022年VC市場動向
4-3.VCによる投資分野と投資ステージ
VCによる投資状況を、投資分野と投資ステージの観点から紹介します。
2022年では、VCが主として投資した分野は、IT関連の51.0%を筆頭に、製品/サービス分野に20.8%、バイオ/医療/ヘルスケア分野に15.0%、工業/エネルギー分野に13.2%などでした。
また投資ステージとしては、シードが19.3%、アーリーが36.7%、エクスパンション19.1%、レイター24.9%となっており、投資ステージではシード及びアーリーの占める割合が56.0%とVC投資の主要ターゲットになっています。
情報元: 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会/2022年VC市場動向
4-4.IPO市場におけるVCの出資割合
最後にスタートアップのEXIT環境であるIPOマーケットにおいて、IPOした会社のうち、どれぐらいの会社がVCから出資を受けていたか紹介します。
2021年度のデータによると、IPOした会社は125社でしたが、うちVCから出資を受けていた会社が67社と、じつに割合は53.6%と全体の約半分を占めています。
これは2019年や2020年も同様で、VCの出資がIPOを実現した各社にいかに貢献していたかの強力な証左となるでしょう。
情報元: 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会/2022年VC市場動向
5.おわりに
VC及びCVCについて前編では、VCの仕組みとその種類や特徴、日本のVC市場動向など、詳しく解説しました。
続けて中編では、VCの活用上のメリットやデメリット、VCとの接触方法など、詳しく紹介します。
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